第13章 500万円のお小遣いを要求！

神崎翔の顔色は一瞬にして陰鬱で恐ろしいものに変わった。

「神崎弥香、お前は私のやり方をよく知っているはずだ。早めにその考えを捨てることを勧める」

神崎弥香は、彼と離婚することが難しいことを理解していた。

しかし彼女はそれで落胆することはなかった。弁護士の言う通り、彼の浮気の証拠を密かに集め、時機が熟したら裁判所に離婚を申請することに決めた。

神崎弥香は数秒間間を置いて、軽く笑った。「そんなに深刻にならないで。ただ聞いただけよ。それに、さっきの協定は本気なの？」

神崎弥香の180度の態度の変化に神崎翔の表情はコロコロと変わり、彼は目の前の女性の心をますます理解できなくなっていた。

彼は彼女を審査するように見つめ、疑わしげに言った。「もちろんだ。同意するのか？」

神崎弥香は長いため息をついて、諦めたような表情を浮かべた。「あなたは私に同意しない権利をくれたの？」

「いいや」

「選択肢がないなら、素直に受け入れるわ」神崎弥香は唇の端を上げ、どうしようもないという様子を見せた。

彼女の何気ない笑顔が、神崎翔の心を奪った。

神崎弥香はいつも彼に会うとき、慎重で従順な、良妻賢母のような姿を見せていた。それが彼には退屈で、うんざりするものだった。そのため彼は彼女の国を傾ける美しさを見過ごしていた。

彼ののどぼとけが上下に動き、低い声で言った。「それを理解しているなら良い。今後は離婚の話を持ち出すな」

「わかったわ。お小遣いが欲しいの。まず五億円振り込んで。私も養われる味を知りたいわ」

とりあえず離婚できないなら、バカを演じる必要もない。できるだけ多く搾り取ろう。そうしなければ、神崎翔はその金を外の女に浪費するだけだ。

神崎翔は一瞬固まった。結婚して五年、神崎弥香が自分からお金を求めたことは一度もなかった。以前はいつも彼が無理やり生活費としてお金を渡していた。

今や彼女は自ら求めるだけでなく、その要求も大きかった。

「どうしたの？惜しいの？」神崎弥香は彼を見て、冗談めかして言った。

神崎翔は深い眼差しで見つめた。「後で口座番号を送ってくれ。振り込んでおく」

「わかったわ」神崎弥香は微笑んで、車のドアを開け、素早く降りた。

神崎弥香が建物に入るまで、神崎翔はまだその場に呆然と立ち尽くしていた。