「鈴木智恵、あなたは謙虚すぎるわ。でも5年前のことを思い出すと本当に腹が立つわ。当時、技術的にはトップクラスだったあの人が、まさか審査員に体で賄賂を贈るなんて卑劣な手段を思いつくなんて。私たちの成績が良くなかったのも当然ね、ベッドテクニックを学ばなかったからよ!」
その後、部屋中に爆笑が広がった。
「彼女自身が堕ちたのはまだいいけど、川辺教授まで巻き込んで恥をかかせて、本当に残念だったわ。徳も才能も兼ね備えた川辺教授が、それを機に退職して講義をしなくなってしまったんだから」
「人と人とは比べられないわね。彼女は事件の後も神崎家のお金持ちに嫁いで、セレブ妻として華やかに暮らしている。でも同じ寮にいた村上蕾はダメだった、噂話に耐えられずに飛び降り自殺してしまったわ」
神崎弥香はドアの前に立ち、怒りが込み上げるのを感じた。
「あなたたちはデタラメを言うのはやめなさい。あの時の事件で神崎弥香は冤罪だったのよ。私はあなたたちより彼女のことをよく知っている、彼女はそんな人じゃない」
「冤罪?当時、不適切な写真が掲示板に流出したじゃない、それは動かぬ証拠よ。それに彼女はお金持ちの令嬢だもの、誰が彼女を陥れようとするの?」
「明らかに彼女は実力不足で、近道をして優勝しようとしただけよ。もし彼女が証拠を突きつけられなかったら、優勝は彼女のものになっていたわ。鈴木智恵のような田舎出身の人は、ただの捨て駒で、永遠に日の目を見ることはなかったでしょうね」
「草刈駆、もうデタラメを言うな。同級生としての情けをかけないぞ、ぶん殴るからな!」
「佐藤浩二、来いよ、殴ってみろよ!どうせ俺は会社をクビになったばかりだ。飯のタネに困ってるところだ。お前が手を出せば、訴えてやるからな」
「お前!この無頼漢、まったく…」
佐藤浩二の怒りに満ちた言葉が終わらないうちに、部屋のドアが開いた。
全員が驚いた表情でドアの外を見ると、神崎弥香がゆっくりと入ってきた。
彼らは顔を見合わせた。彼女が恥ずかしくて来ないだろうと思っていたのに、こんなにも堂々と現れるとは。
「わぁ!神崎弥香は当時よりもっと美しくなってる、さすが科学大学の校花ね」
静かな群衆の中から突然賞賛の声が上がり、みんなは我に返り、次々と神崎弥香を取り囲んで持ち上げ始めた。