第33章 男の心には好きな人がいる!

エレベーターのドアが素早く閉まり、神崎弥香は頭が真っ白になり、その場に凍りついたままだった。

佐藤浩二が彼女を呼びに来るまで、彼女はようやく我に返った。

「弥香、何かあったの?なんだかそわそわしているみたいだけど。」

「い、いいえ、何でもないわ。行きましょう!」

「うん。」

その一方で、三神律たち三人が個室に入って席に着くと、レストランのオーナーである田村勇一が丁寧にお茶を注ぎ、水を運び、メニューを渡した。

「三神社長、こちらは当店のメニューです。帝都のものには遠く及びませんが、海浜市ではまあまあの評判です。何か召し上がりたいものがございましたら、どうぞおっしゃってください。」

田村は彼の表情を窺いながら、おずおずと尋ねた。

三神律はさっき神崎弥香を見かけた時の思いに浸っていて、顔色は暗く、一言も発しなかった。