エレベーターのドアが素早く閉まり、神崎弥香は頭が真っ白になり、その場に凍りついたままだった。
佐藤浩二が彼女を呼びに来るまで、彼女はようやく我に返った。
「弥香、何かあったの?なんだかそわそわしているみたいだけど。」
「い、いいえ、何でもないわ。行きましょう!」
「うん。」
その一方で、三神律たち三人が個室に入って席に着くと、レストランのオーナーである田村勇一が丁寧にお茶を注ぎ、水を運び、メニューを渡した。
「三神社長、こちらは当店のメニューです。帝都のものには遠く及びませんが、海浜市ではまあまあの評判です。何か召し上がりたいものがございましたら、どうぞおっしゃってください。」
田村は彼の表情を窺いながら、おずおずと尋ねた。
三神律はさっき神崎弥香を見かけた時の思いに浸っていて、顔色は暗く、一言も発しなかった。
黒田瑶子以外の場にいる全員が、この帝都の御曹司から発せられる圧迫感を感じていた。
「お兄ちゃん、店長さんが何を食べるか聞いてるのよ。なんでそんな不機嫌な顔してるの?」瑶子は彼の前に歩み寄り、彼の袖をつかんで軽く揺すりながら、不満そうに小さな唇を尖らせた。
三神律はようやく彼女に気づき、すぐに手で彼女の鼻先をつついて、唇の端をわずかに引き上げた。「お前がお腹すいてるんだろ?食べたいものを自分で選びなさい。」
「そうよ、瑶子ちゃん。このレストランはとても素敵よ。何か食べたいものがあるか見てみて。」彼女の向かいに座っている河野月美は目を細めて微笑み、彼女に取り入るような表情を浮かべた。
横に立っていた田村勇一は軽く頭を下げ、タイミングよく口を挟んだ。「お嬢様、当店のマネージャーにおすすめの料理をいくつか紹介してもらいましょうか?」
黒田瑶子は白く透き通るように赤みがかった小さな顔を上げ、頭を傾けて少し考えた後、田村を見て、浅い小さなえくぼを見せながら言った。「いいわよ。でも辛いのはダメよ。女の子はお肌のケアに気をつけなきゃいけないんだから。」
黒田瑶子の子供らしい言葉に、その場にいる全員が笑い、不機嫌な顔をしていた三神律でさえ、表情がかなり和らいだ。
彼の気分が良くなると、部屋全体の緊張した雰囲気がすぐに和らいだ。