第91章 御曹司が霸気で神崎弥香を守る(中)

会場は一瞬にして静まり返り、針が一本落ちる音さえ聞こえるほどになった。皆の視線が再び壇上の三神律に集まった。

彼は声のした方向を見て、眉間を少し動かし、その後何気なく答えた。「私が彼女を選んだことなど一度もない。彼女が私を選んでくれるかどうかだ」

彼の全身からは怠惰で冷たい雰囲気が漂っていた。この言葉が出ると、皆は顔を見合わせ、完全に呆然としていた。

神崎弥香の目に一瞬の驚きが走り、この瞬間、思考が完全に停止した。

観客席の西田秀子は複雑な表情を浮かべていた。三神律が今、神崎弥香を守ったことは嬉しく理解できたが、彼の先ほどの言葉は単に守るというだけではなく、皆の前で神崎弥香に告白したのだった。

三神律は彼女が手塩にかけて育てた子だった。彼は幼少期の経験から結婚を恐れ、女性を寄せ付けなかった。以前、彼女が神崎弥香のことを話した時も、彼は知らないし関心もないという態度を取っていた。なぜ突然このような態度になったのだろう?もしかして彼らは前から知り合いだったのか?そこには彼女が知らない理由があるに違いない。

神崎弥香のことは好ましく思っていたが、この子は複雑な生い立ちを持ち、性格は強情で強靭だった。一方、三神律も頑固な性格で、二人が一緒になるのは適していないかもしれないと、彼女の心の奥底に不安が湧き上がってきた。

彼女の隣にいる黒田雪乃は彼らとは違い、少しも驚いていないような表情を浮かべていた。誰もが三神律は女性を寄せ付けないと言うが、彼女はそれに同意したことがなかった。感情を動かされない男女などいない、ただ出会っていないだけだ。

情熱家は皆、裕福な家庭の出身だ。三神律のような、苦労を知らない人間は、一度誰かを好きになると、相手がどんな身分や地位であろうと、周囲がどんなに諫めようと反対しようと、気にも留めない。

彼はただより熱烈に愛し、何の躊躇もなく一直線に突き進むだけだ。若い頃の彼女自身のように、愚かで無分別だった。

しばらくの沈黙の後、壇下の森本泉は怒りと不満から拳を強く握りしめた。彼は怒りに満ちた表情で、諦めきれずに尋ねた。「あなたが彼女を好きだとしても、彼女が競争相手を中傷し誹謗した事実は変わりません。それに5年前に大騒ぎになったあの事件も。彼女は目的のためなら手段を選ばない、悪意に満ちた女です」