会場は一瞬にして静まり返り、針が一本落ちる音さえ聞こえるほどになった。皆の視線が再び壇上の三神律に集まった。
彼は声のした方向を見て、眉間を少し動かし、その後何気なく答えた。「私が彼女を選んだことなど一度もない。彼女が私を選んでくれるかどうかだ」
彼の全身からは怠惰で冷たい雰囲気が漂っていた。この言葉が出ると、皆は顔を見合わせ、完全に呆然としていた。
神崎弥香の目に一瞬の驚きが走り、この瞬間、思考が完全に停止した。
観客席の西田秀子は複雑な表情を浮かべていた。三神律が今、神崎弥香を守ったことは嬉しく理解できたが、彼の先ほどの言葉は単に守るというだけではなく、皆の前で神崎弥香に告白したのだった。
三神律は彼女が手塩にかけて育てた子だった。彼は幼少期の経験から結婚を恐れ、女性を寄せ付けなかった。以前、彼女が神崎弥香のことを話した時も、彼は知らないし関心もないという態度を取っていた。なぜ突然このような態度になったのだろう?もしかして彼らは前から知り合いだったのか?そこには彼女が知らない理由があるに違いない。