第356章 彼に恋をさせて、あなただけを愛するほどに

根岸詩音の言葉が落ちると、高橋優奈は彼女を見つめた。「反対しているわけじゃないわ。ただ、どこに行くのかって聞いただけ」

根岸詩音は少し笑った。「綾瀬社長って本当に面白いわね。あなたはどう思う……私たちはどこに行くべき?」

高橋優奈には考えがなく、逆に尋ねた。「私もわからないわ。あなたはどこに行きたいの?」

「上渓坊に行きましょう。でも、とりあえず彼には返事しないで。私たちが着いてから返信すればいいわ。そうしないと、まだ数言葉も交わしていないうちに、綾瀬社長がついてくることになるから」

高橋優奈は疑わしげな表情で根岸詩音を見つめ、不確かに尋ねた。「彼は来るとは言ってないわ。ただどこに行くのか聞いただけよ。返事しないなんて……本当にいいの?」

結局のところ……綾瀬さんは彼女の夫なのだから。