第12章 彼は全てを知っている

林知恵は草刈誠に後ろへ引っ張られ、意識が朦朧とする中、彼女は拳を強く握り締め、指先が手のひらに食い込み、痛みが走って彼女の思考を呼び戻した。

彼女は自分を救わなければ!

林知恵はドアノブを掴んで自分の体を支え、自分を救うことができるものを探した。

センターコンソールの上のクリスタルオブジェが彼女にチャンスを与えた。

しかし、手を伸ばして届こうとしても、いつもほんの少し足りなかった。

彼女は歯を食いしばり、草刈誠の力に抵抗しながら、指先を少しずつ伸ばしてクリスタルオブジェに届かせた。

滑り止めマットから掴み上げた瞬間、彼女は力いっぱい後ろに叩きつけた。

ドンという音と共に、草刈誠は闇うめき声を上げ、林知恵から手を放した。

林知恵はその隙にドアロックを解除し、転がるようにして車から這い出した。