第13章 彼女はただの駒

林知恵が目を覚ますと、ベッドの傍らに制服を着た女性警官が座っていた。

彼女は微笑み、とても安心感を与えてくれた。

「目が覚めましたか?水を飲みますか?」女性警官は立ち上がり、心遣いよく彼女に水を注いだ。「あなたの怪我は全て表面的なもので、大したことはありませんよ」

「ありがとう」

林知恵は体を起こしてコップを受け取った。

今でも、彼女は恐怖で震えていた。

女性警官は彼女を見つめ、すぐには質問せず、彼女が少し落ち着いてから尋問を始めた。

「草刈誠も無事です。ただ、あなたたち二人の言い分が食い違っているので、あなたの証言が必要なんです」

林知恵は水を飲む動作を止めた。「食い違っている?どういう意味ですか?」

こんなに明らかなのに、どうして食い違うことがあるのだろう?

女性警官は事実を述べた。「草刈誠は酔っていたから突然暴れたと言っています。彼は海外の精神鑑定書も提出しました。それに...あなたは自分から彼と食事や映画を見に行ったので、彼はあなたが関係を持つことに同意していると思ったと言っています」

林知恵は息が詰まり、胸に重圧を感じ、痛みが広がった。

「相手と食事をして映画を見たら、それは関係を持つことに同意したということになるんですか?どこにそんな規則があるんですか?私は彼を拒否しました!」

「林さん、草刈誠はあなたのお母さんも同意していたと言っています」女性警官は無力な表情で彼女を見た。

「...」

林知恵は言葉に詰まり、何も言えなくなった。

女性警官は数秒間沈黙した後、慰めるように言った。「今はあなたの証言がとても重要です。私たちは必ず真相を解明します」

それを聞いて、林知恵は少し安堵した。少なくとも彼女を助けようとする人がいるのだ。

彼女は事の経緯を全て話し、草刈誠の車が改造されていたこと、これが初めてのことではないことも指摘した。

女性警官はすべてを記録し、最後に尋ねた。「他に何か付け加えることはありますか?」

林知恵はしばらく考えてから、ゆっくりと一言を吐き出した。

「三男様と折木和秋、彼らが見ていました」

女性警官は一瞬固まり、表情が曇った。

林知恵は追及した。「何か問題でも?」