第30章 叔父様、助けて

彼女は唇を引き締め、彼のキスを待たずに自らつま先立ちで噛みついた。元の歯形に重ねてもう一度噛んだ。

宮本深は痛みを感じず、ただ邪魔されたことに軽く舌打ちした。

傷が癒えかけていたのに再び血が滲んでも、彼は気にしなかった。

林知恵が噛むのをやめて吸い始めると、彼の瞳は二回り深くなった。

なるほど。

林知恵は彼の首から手を離し、怒りを込めて小声で言った。「叔父さんは折木和秋にどう説明するか考えた方がいいわ」

宮本深は首を傾げて鏡を見て、歯形の上にできたキスマークを確認し、軽く眉を上げた。

「お前は犬か?」

「……」

林知恵は顔をそむけた。湿気の中、まつ毛に細かい水滴がかかり、頑固な瞳に水気が混じっていた。

手放したくないほど魅惑的だった。

彼は適当に首を拭いて、低い声で警告した。「宮本康弘には近づくな」

林知恵は黙っていた。

宮本深は指輪をはめた手で彼女の胸元を撫で、あと少しで境界線を越えそうになった……

「ん?」

「わかったわ」

彼女もそもそも宮本康弘を巻き込みたくなかった。

宮本深は一歩下がり、浴槽を指さした。「入っておけ」

林知恵は彼の言葉の意味がわからなかったが、浴槽にはすでにお湯が満たされていることに気づいた。

彼は前もってお湯を準備していたの?

しかし彼女が口を開く前に、折木和秋がすでにドアノブを必死に回していた。

宮本深が先ほど鍵をかけていたにもかかわらず、彼女はどこからか鍵を見つけてきて、開けようとしていた。

林知恵は緊張のあまり、体が小刻みに震えた。

ドアが開きそうになった瞬間、宮本深は彼女を引き寄せ、ドアを開けて外に出た。

「何か用か?」

そう言いながら、彼はさりげなくドアを閉め、鍵を抜いた。

林知恵はようやく安堵の息をつき、ほとんど地面に崩れ落ちそうになった。

彼女は壁につかまりながら清潔なバスタオルを取って自分をしっかりと包み込んだが、鏡に映る自分の全身が赤く染まっている姿を見た。

思わず胸元のバスタオルをきつく握りしめた。

突然、何かを思い出し、胸がどきりとした。

彼女の物!

ちょうどその時、ドアの外から折木和秋の気遣いのある声が聞こえてきた。

「三男様、お片付けします」

林知恵はもうそんなことを気にしている場合ではなく、振り返ってドアノブを握り、そっと回した。