林知恵は無表情で観客を見つめ、重々しいトロフィーを手に受け取った。
無形の手が彼女の首を締め付けていた。
窒息感は、運命から逃れることがいかに難しいかを物語っているようだった。
特に、後ろ盾のある相手に立ち向かう時は。
しかし、次の瞬間、彼女はトロフィーをしっかりと握りしめた。
前世では、彼女はコンテストに参加する資格すらなかったが、今世では折木和秋を脅かしてトロフィーを手に入れた。
少なくとも、あの忌まわしい運命はすでに軌道を外れ始めていた。
いつか、それは彼女の望む軌道に乗るだろう。
林知恵は顔を上げ、客席に向かって微笑んだ。観客に向けてであり、また墨のような瞳の持ち主にも向けられていた。
宮本深。
もう誰も彼女を倒すことはできない、彼女自身が倒れない限り……。