第175章 ただの夢

宮本深は深い眼差しで林知恵を見つめていた。まるで獲物を狙う猛獣のように。

彼女は息を詰め、白い肌は熱いお風呂に入ったせいで、薄いピンク色を帯びていた。

水気を含んだ瞳は流し目になり、うっとりと人を魅了していた。

彼はゆっくりと身を屈め、いつもの強引さは影を潜め、どこか慎重な様子だった。

林知恵はそれを見つめ、頭が真っ白になり、抵抗することさえ忘れていた。

しかし宮本深が近づこうとした時、彼女は鼻に不快感を覚え、一気に理性が戻ってきた。

彼女はすぐに彼を押しのけ、体を反転させてくしゃみをした。

「ハックション!」

くしゃみをした後、林知恵はベッドサイドからティッシュを取り、鼻を拭いた。

ティッシュを捨てると、体が温かくなったのを感じ、見下ろすと布団がかけられていた。

宮本深は仰向けに目を閉じ、低く掠れた声で言った。「寝なさい」

林知恵は鼻をこすり、ベッドの隅に小さく丸まった。

とりあえず我慢しよう。この一日は浮き沈みが激しく、もう力が残っていなかった。

林知恵は枕に頭をつけるとすぐに眠りについたが、本当に寒かった。

特に背中では熱源を感じるのに、自分の下は冷え冷えとしていた。

その鮮明な対比が、彼女の眠りを極めて不安定なものにしていた。

うとうとと苦しんでいる時、温かい手のひらが彼女の腰に触れ、彼女を引き寄せた。

熱源に近づくと、全身がリラックスし始め、頭は男性の胸に当て、冷たい手は思わず熱源を探った。

突然、一つの手が彼女の手をしっかりと握った。

頭上からも男性の低くかすれた声が聞こえた。「触り回さないで。本当に眠りたくないのか?」

林知恵はそれ以上動かず、おとなしく眠りについた。

この眠りは、雪村真理が電話をかけてくるまで続いた。

着信音を聞いた瞬間、彼女は魂が戻ってきたような茫然とした感覚を覚え、空っぽのベッドを見つめて3秒ほど呆然としてから電話に出た。

「知恵、下に降りて朝食を食べましょう」

「はい」林知恵の声はかすれていた。

「どうしたの?よく眠れなかった?」

「いいえ、すぐに行きます」

電話を切ると、林知恵はすぐにベッドから出て身支度を整え、最速で階下に降りた。

……

レストラン。

林知恵は折木和秋もいることに驚いた。

「知恵、おはよう。よく眠れた?」折木和秋は彼女を見つめて尋ねた。