ウェディングドレスショップは海外の一流ブランドが国内で唯一展開する実店舗だった。
ドレスを見るための予約だけでも1年前からしなければならないほどだ。
もちろん、宮本深のような身分の人間なら待つ必要はない。
ルーヴル美術館のように豪華な店内に入ると、マネージャーはすでに店内を貸し切り、待ち構えていた。
「当主様、三男様、三男夫人」
マネージャーは目端が利き、腕を組む二人を見て即座に呼び方を変えた。
折木和秋は恥ずかしそうに宮本深を見つめ、彼の返事を待ち、自分の立場を確かなものにしようとしているようだった。
宮本深は彼女に応えず、冷たい表情で言った。「今夜、海外とのビデオ会議がある」
言外の意味は時間を無駄にするなということだ。
マネージャーは戸惑い、思わず折木和秋を見た。
折木和秋も一瞬戸惑ったが、すぐに穏やかな笑顔で彼のコートの襟を整えながら言った。「無理しないで。実は私一人で来ても大丈夫だったのに。あなたにはもっと休んでほしいわ」
「いらない。行こう」
宮本深はそっけなく言い、コートを脱いで田中慎治の手に渡し、まっすぐ前に進んだ。
折木和秋の手は彼のコートの端にしか触れられず、一瞬固まった後、自分のコートを脱いだ。
「三男様、急ぎすぎですよ」
彼女は横向きに宮本当主を支えながら前に進み、振り返って林知恵に声をかけるのも忘れなかった。「知恵、早く来て」
林知恵はすでに折木和秋のやり方に慣れていて、表情を変えず、黙って後ろについていった。
展示室ほどの広さの試着室で、当主と宮本深が席に着くとすぐに、マネージャーが自ら茶を注いだ。
茶の香りが漂う中、二人の店員の声とともに、試着カーテンがゆっくりと開かれた。
「花嫁様のご登場です」
折木和秋は白いベールをかぶってゆっくりと歩み出た。サテンのウェディングドレスには数千個のダイヤモンドが散りばめられ、一歩一歩が輝いていた。
ウェディングドレスを着た女性は世界で最も美しい女性だと言われるが、それは嘘ではない。
林知恵は折木和秋がどれほど意地悪か知っていても、今の彼女がどれほど美しく神聖に見えるかを認めざるを得なかった。
前世では、彼女も結婚式を夢見ていた。
しかし彼女は死ぬまでウェディングドレスを着ることはなかった。
彼女と宮本深は世論に押されて結婚した。