林知恵はスカートの裾を整えながら振り返り、折木和秋の驚いた表情に向き合った。
「折木さん、どうして私の許可なくカーテンを開けるの?もし着替え中だったらどうするつもり?」
折木和秋は白いドレスを着た林知恵を見て、嫉妬で言葉が出なかった。
とてもシンプルなデザインなのに、彼女をより一層美しく引き立てていた。
様々な美女を見慣れているはずのウェディングショップのスタッフたちも、驚嘆の眼差しを向けていた。
彼女はカーテンをきつく握り、笑顔を保とうとしたが、林知恵の背後の鏡に付いた手形に気づいた。
折木和秋は完全に笑顔を失い、林知恵を恨めしげに見ながら、皮肉めいた口調で言った。「知恵が選んだブライズメイドドレスはこんなに長いの。知らなければ簡易的なウェディングドレスかと思うわ」
林知恵は軽く笑った。どんな服を着ても、折木和秋は何か言い訳をするのだから。
宮本当主が不機嫌な表情を見せたのを見て、彼女は先に言った。「私もブライズメイドは初めてだから、シンプルな方がいいと思ったの。でもこれでもウェディングドレスに見えるなら、あなたが選んでよ。主役はあなたなんだから、私が何を着るかは重要じゃないわ」
言い終わるや否や、宮本深がドアを開けて入ってきた。彼の視線は何気なく林知恵を掠めた。
林知恵は無意識に視線を避け、頭を下げた。
折木和秋は複雑な眼差しを向けた後、すぐに平静を装って笑った。「三男様、ちょうどいいところに。知恵はますます口が上手くなって、私じゃ言い負かせないわ。私はただこのドレスが長すぎて、彼女が歩きにくくて転びそうになるのが心配だっただけなのに」
宮本深はソファに座り、ゆっくりと茶碗を手に取った。「それなら赤いのに変えればいい。どうせ林知恵が何を着ようと気にしないと言ったんだろう」
折木和秋は言葉に詰まり、宝石展示会で林知恵が赤いドレスで場を圧倒した光景を思い出した。
彼女は指をきつく握りしめ、笑いながら言った。「もういいわ、知恵も私のためにこんなシンプルな服を着てくれたんだから、私も顔を立ててあげないと」
「ああ」宮本深は茶碗を置いて立ち上がった。「父上、私はまだ用事があるので、先に失礼します」
「行きなさい」
宮本深が去った後、宮本当主も立ち上がった。
ざあっ——
熱いお茶が林知恵のスカートの裾にこぼれた。