林知恵はお風呂を済ませ、客室のバスローブを着た。
床まで届く男性用のバスローブを見て、彼女は不思議に思った。
前回来た時も、家の内部をよく見ていなかった。
今になって気づいたが、ここには折木和秋の生活の痕跡が全くなかった。
女性が宿泊した形跡すらない。
折木和秋はここに住んでいなかったの?
疑問を抱きながら、彼女はベッドに潜り込み、その思考はすぐに柔らかいダウンケットの心地よさに取って代わられた。
とても気持ちいい。
彼女は一回転して、目を閉じた。
しかし、慣れないベッドで寝返りを打ちながら眠れず、目を閉じて星を数えるしかなかった。
何個目の星を数えていたのか分からないうちに、隣の部屋からグラスが床に落ちる音が聞こえた。
またこの手か!
林知恵は冷ややかに鼻を鳴らし、体を反転させて布団を頭まで被り、知らぬ存ぜぬを決め込んだ。
大の大人が自分の家で何か問題を起こすとは思えなかった。
しかし、しばらくすると隣は静まり返った。
林知恵は布団から頭を出し、天井を見つめながら静かに耳を澄ませたが、本当に物音一つしなかった。
まさか...気を失ったのでは?
木村悦子の忠告を思い出し、林知恵はやはり起き上がって隣の部屋のドアをノックした。
「おじさま?おじさま?大丈夫ですか?」
「おじさま、入りますよ」
林知恵は慎重にドアを押し開けた。
部屋の中は真っ暗で、ドアの隙間から漏れる一筋の光以外は、まるで光を通さない密室のようだった。
彼女はしばらく手探りしても電気のスイッチが見つからず、暗闇に目を慣らしながらゆっくりと部屋に入った。
ベッドの端にぶつかり、ベッドの縁に沿って手を這わせていくと、熱い肌に触れた時、彼女はようやく自分が宮本深の体に触れていることに気づいた。
彼女は驚いて手を引っ込め、その場に立ち尽くした。
おかしい、彼女がここまで入ってきたのに、彼はまったく反応を示さなかった。
宮本深はとても警戒心が強く、田中慎治がいなくても一人で十人分の能力を持っているはずで、彼女が入ってきたことに気づかないはずがない。
林知恵が我に返ると、手のひらにべたつきを感じた。
何かがおかしいと気づき、彼女はすぐに床に半ば跪いてベッドサイドランプを探した。