城外の小さな旅館。
折木和秋は黄ばんでタバコの焦げ穴さえある寝具を見て、吐き気を催した。
「こんな場所に人が住めるの?」
木村大賀は彼女を抱きしめ、怒るどころか笑った。「和秋、やっと君は僕だけのものになったね。」
折木和秋は少しも嬉しくなかった。彼女は力強く彼を押しのけた。「黙って!聞きたいんだけど!なぜこんなボロい場所に連れてきたの?」
「市内には宮本家のあなたを探す人たちがいるから、ここで我慢して。航空券を買ったら、海外へ連れていくよ。」
木村大賀はでこぼこのテーブルに寄りかかり、タバコに火をつけ、じっと折木和秋を見つめた。
今の折木和秋は少し惨めな姿だったが、彼の目には、ウェディングドレス姿の彼女はやはり美しく映った。
彼は手を伸ばして彼女の顔の埃を拭き取り、一気に彼女の首をつかんで引き寄せ、強く口づけた。