林知恵は止める間もなく、宮本深はソファの上のものを直接手に取った。
編みかけのマフラー。
そして様々な色の毛糸玉。
彼女は何列か編んでみて色が気に入らなかったものは、脇に置いていた。
次々と置いていくうちに、すべてが半完成品になっていた。
最終的に、彼女は深紅と黒の間で迷っていた。
宮本深は黒いものに不自由していないので、彼女は深紅の方を選びたかった。
しかし彼の好みが黒かもしれないと心配になり、黒のマフラーも編んでいた。
ソファを見渡すと、まるで大げさなほどだった。
「全部俺にくれるのか?」
宮本深の表情は相変わらず冷たく、口調にもあまり起伏がなく、何気なく尋ねるような感じだった。
林知恵は急に自分が勘違いしていたのではないかと思った。
彼女は恥ずかしそうにソファの上のものを隠そうとした。
「違うの、久しぶりに編んだから技術が落ちてて、だからたくさん買って準備したの。」
宮本深は彼女を通り過ぎ、手に取ったものを見た。手のひら幅の長さで、何針か落としていた。
「確かに下手になったな。」
林知恵は口をとがらせ、手を伸ばして編み間違えたマフラーを奪い取った。
「外で買ったものには敵わないわよね。」
気に入らないなら要らないって言えばいいのに。
彼女も心を込めたのに、結局文句を言われるなんて。
傍らにいた田中慎治はそれを聞いて頭が痛くなり、宮本深の「人情味のない」情緒の無さに心から感心した。
彼は急いで割り込んだ。「林さん、帰り道で三男様が特に黒糖生姜湯を煮るようにと言っていました。家のものはどこにありますか?私が作りに行きます。」
林知恵はそれを聞いて少し怒りが収まった。
「家に生姜がないみたい、山田さんに借りてくるわ。」
「わかりました。」
林知恵はつま先立ちで家を出て、山田さんの部屋のドアをノックした。
山田さんは彼女の足を見て心配そうに言った。「どうしたの?」
以前の宮本康弘の件について、林知恵は山田さんに多くを語っていなかった。
山田さんは自分のお見合いが仕組まれたこと、そして林知恵が巻き込まれて恐喝されたことだけを知っていた。
だから林知恵にとても気を遣っていた。
林知恵は壁に寄りかかって言った。「大丈夫よ、ちょっと生姜を借りたくて、お腹が痛いの。」