第219章 恩義に過ぎない

林知恵は止める間もなく、宮本深はソファの上のものを直接手に取った。

編みかけのマフラー。

そして様々な色の毛糸玉。

彼女は何列か編んでみて色が気に入らなかったものは、脇に置いていた。

次々と置いていくうちに、すべてが半完成品になっていた。

最終的に、彼女は深紅と黒の間で迷っていた。

宮本深は黒いものに不自由していないので、彼女は深紅の方を選びたかった。

しかし彼の好みが黒かもしれないと心配になり、黒のマフラーも編んでいた。

ソファを見渡すと、まるで大げさなほどだった。

「全部俺にくれるのか?」

宮本深の表情は相変わらず冷たく、口調にもあまり起伏がなく、何気なく尋ねるような感じだった。

林知恵は急に自分が勘違いしていたのではないかと思った。

彼女は恥ずかしそうにソファの上のものを隠そうとした。

「違うの、久しぶりに編んだから技術が落ちてて、だからたくさん買って準備したの。」

宮本深は彼女を通り過ぎ、手に取ったものを見た。手のひら幅の長さで、何針か落としていた。

「確かに下手になったな。」

林知恵は口をとがらせ、手を伸ばして編み間違えたマフラーを奪い取った。

「外で買ったものには敵わないわよね。」

気に入らないなら要らないって言えばいいのに。

彼女も心を込めたのに、結局文句を言われるなんて。

傍らにいた田中慎治はそれを聞いて頭が痛くなり、宮本深の「人情味のない」情緒の無さに心から感心した。

彼は急いで割り込んだ。「林さん、帰り道で三男様が特に黒糖生姜湯を煮るようにと言っていました。家のものはどこにありますか?私が作りに行きます。」

林知恵はそれを聞いて少し怒りが収まった。

「家に生姜がないみたい、山田さんに借りてくるわ。」

「わかりました。」

林知恵はつま先立ちで家を出て、山田さんの部屋のドアをノックした。

山田さんは彼女の足を見て心配そうに言った。「どうしたの?」

以前の宮本康弘の件について、林知恵は山田さんに多くを語っていなかった。

山田さんは自分のお見合いが仕組まれたこと、そして林知恵が巻き込まれて恐喝されたことだけを知っていた。

だから林知恵にとても気を遣っていた。

林知恵は壁に寄りかかって言った。「大丈夫よ、ちょっと生姜を借りたくて、お腹が痛いの。」