第370章 証拠があります

男の顔が間近に迫り、林知恵は息を止め、思わずマフラーを引き締めた。

彼に気づかれないように、彼女は視線をそらし、マフラーを彼の首に巻き、そして彼の襟元を指さした。

「中に入れて、服の濡れたところを隠して」

宮本深は目を伏せ、目には少し落胆の色が見えたが、図々しくせず、自分で身なりを整えた。

しばらくして、二人は2号棟に入り、高校3年3組を見つけた。

窓際に立つと、教室内が一目で見渡せた。

五、六人の女子生徒が座り、二人三人と話をしていた。

ただ一人の女子生徒だけが真剣にテスト問題を解いていて、窓の外に人がいることに気づくと顔を上げて一瞥した。

林知恵と短く二秒ほど目が合うと、彼女は素早く俯き、手に持ったペンまで軽く震えていた。

林知恵が他の生徒たちを見ている隙に、その女子生徒はティッシュを二枚取り、トイレに行くふりをして立ち上がった。

ドアに着いたとき、逞しい腕が彼女の行く手を阻んだ。

女子生徒はそのとき、林知恵の隣にまだ男性が立っていることに気づいた。

宮本深は彼女を一瞥して言った。「高橋蝶子」

彼女は人違いだと言おうとしたが、ちょうど入ってきた同級生に呼ばれた。

「高橋さん、数学の先生が放課後までに印刷したばかりのプリントを配るようにって」

高橋蝶子は目の前の二人を諦めたように見た。

「ここで話すのはやめてもらえませんか?」

宮本深は腕を下ろした。

高橋蝶子は二人を連れて校舎の屋上へ行った。

二、三組のカップル以外、誰もいなかった。

高橋蝶子は隅に立ち止まり、頭を低くし、両手は赤く腫れるほど握りしめていた。

林知恵も彼女を怖がらせたくなく、穏やかな声で言った。「何年も会っていなかったけど、私があなたを探しに来たことに少しも驚いていないようね」

高橋蝶子は唇を噛み、小声で言った。「あなたの力になれません。私は何も知りません」

結局若すぎるせいか、慌てて、すべての切り札を見せてしまった。

宮本深は冷たく言った。「私たちがまだ何も聞いていないのに、もう知らないと言うのか?」

「高橋さん、私はトラブルを起こしに来たわけじゃないの。ただ状況を知りたいだけ。あなたのお母さんの投資のことを知っているんじゃない?」林知恵は誠実に言った。