第369章 あなたから積極的に

声を聞いて、林知恵は我に返り、すぐに目の前の男性を押しのけた。

しかし彼女がまだ立ち直れないうちに、学生たちに押されて宮本深の方へ押しやられた。

彼女は一瞬で宮本深の胸に飛び込んでしまった。

彼は手を伸ばして林知恵を支え、少し頭を下げて言った。「君から来たんだよ」

林知恵は唇を噛み、何度か抵抗したが、彼に腰をしっかりと掴まれていた。

「動かないで、人が多すぎる。まず外に出てから話そう」

そう言いながら、彼は林知恵を抱きかかえて前に進んだ。

林知恵は彼の手を引っ張った。「離して!誰かに気づかれるわ!」

宮本深は彼女を放さず、軽く彼女の帽子の縁を押し下げ、彼女の頭を自分の胸に押し付けた。

「行こう」

「……」

林知恵は何度か動いたが、まったく力が入らず、彼に抱かれたまま歩くしかなかった。

宮本深のこの姿は近寄りがたく見えたので、誰も彼に押し寄せる勇気はなく、二人はスムーズに人混みから抜け出した。

校門に着いたとき、林知恵は力いっぱい宮本深を押しのけた。

「どうしてここにいるの?」

「通りかかっただけ」宮本深はさらりと答えた。

「三男様、あなた自分が面白いと思ってるの?」

「じゃあ、ボディーガード二人で何を防げると思う?」宮本深は反問した。

「……」

林知恵は言葉を失った。

宮本深は彼女の後ろにボディーガードがついていることまで知っていた。明らかに準備してきたのだ。

林知恵が気づかないうちに、宮本深は手を伸ばして彼女を引き寄せた。

「行こう。君のお母さんはまだ宮本家の二夫人だ。宮本家に関わることだから、私は明らかにしなければならない」

彼の冷たい表情と公私をわきまえた態度に、林知恵は一瞬戸惑った。

彼女が我に返る前に、宮本深はゆっくりと彼女に近づいた。

男性の香りが一瞬で彼女を包み込み、頭上から彼の低い声が聞こえた。

「それとも他に理由がある?」

「わからない」

林知恵は野球帽を直し、自分の視線を隠して、校門に向かって歩き出した。

宮本深は彼女の後ろ姿を見つめ、薄く唇を曲げた。

登録後、二人は校内に入った。

林知恵は携帯を取り出し、山下穂子が以前言及していたクラスを確認した。

そして、ちょうど校門を出ようとしていた学生たちに声をかけた。「すみません、高校3年3組の高橋蝶子はどこにいますか?」