木村悦子は山田照夫の言葉に呆れて、焼き餃子を一つ摘まんで投げつけた。
「余計なこと言うな!」
山田照夫は皿で焼き餃子を受け止め、そのまま口に入れた。
「三男様と林さんの婚約がどういうことか、私たちはよく分かっている。桑田家が許せば、林さんが反対しても無駄だ。でも今の林さんは洗脳されたような状態だから、気をつけた方がいい。」
田中慎治と木村悦子は桑田蘭子が思い込みの激しい様子を見たことがあり、強く同意して頷いた。
そのとき、田中慎治と山田照夫の携帯が同時に鳴った。
どちらもメディアからの連絡だった。
山田照夫は携帯を見終わると、顔を上げて田中慎治を見た。「同じ内容?」
田中慎治は読み上げた。「桑田社長が婚約者と共に港町に到着。」
写真には驚いたことに桑田剛と林知恵の3年以上前の写真が使われていた。
木村悦子は不思議そうに尋ねた。「これはどういう意味?林知恵のための世論作り?」
田中慎治と山田照夫は顔を見合わせ、すぐに立ち上がった。「そう単純ではないだろう。」
そう言うと、二人はすぐに出て行った。
木村悦子は肩をすくめ、朝食を続けた。
しかし食べ物が口に入る前に、田中慎治が戻ってきて彼を引っ張って連れ出した。
狭山一美は食べ物を持って戻ってきた。「みんなどこに行ったの?一人で食べるしかないか。」
……
林知恵がちょうど上着を着て寝室から出ると、ドアベルが鳴った。
彼女は宮本深が星奈と洗面所で水遊びをしているのを見て、自分でドアに行き覗き穴から確認した。
木村悦子と田中慎治だと確認してから、ドアを開けた。
二人は彼女に挨拶をすると、急いで部屋に入った。
宮本深は星奈を抱いて出てきて、田中慎治に視線を向けた。「何があった?」
田中慎治はタブレットを差し出した。「桑田社長と林さんの行方がネットに出回っています。ただ相手は二人が一緒に出張していると思っているようです。」
「今のパパラッチはそんなに暇なのか?婚約者同士が一緒に行動するだけで暴露する?不倫でもないのに。」木村悦子はつぶやいた。
彼の言葉に、宮本深は眉をひそめた。
「これは前菜に過ぎないだろう。」
田中慎治はすぐに理解し、心配そうに言った。「三男様、しばらくは林さんと一緒に姿を見せるべきではありません。特に…お子さんと。」