木村悦子が携帯を置いたばかりのとき、森田謙が自分を見る目に警戒心があることに気づいた。
彼が顔を上げると、森田謙は礼儀正しく手を差し出した。
「あなたが木村先生ですね?」
木村悦子は一瞬驚いた。今日は彼が初めて病院に来たのに、森田謙はどうやって彼が誰だか知っていたのだろう?
森田謙は説明した。「院長から今日、京渡市立病院の医師が知恵さんに付き添って来ると聞いていました。星奈は私の患者ですから、事前に知っておくのは当然です」
木村悦子は深く考えず、手を伸ばして握手した。
「こんにちは、森田先生。ここで時間を無駄にするのはやめましょう。先に中に入りましょう」
「はい」
森田謙は星奈を抱きながら、自然に林知恵の隣を歩いた。
まるで三人家族のようだった。
木村悦子は森田謙の後ろ姿を見て、言い表せない感覚を覚えた。