食事の後、林知恵と狭山一美はもう少し散歩した。
二人は星を見ながらあくびをして、帰ることにした。
駐車場で車に乗ろうとしたとき、狭山一美は突然林知恵の袖を引っ張った。
「知恵、あれはあなたのお母さん?」
林知恵がその方向を見ると、確かに山下穂子だった。
彼女が手を振ろうとして声をかける前に、山下穂子はこそこそと配車サービスの車に乗り込んだ。
宮本石彦は今や会社の副社長で、出入りには運転手が送迎しているのに、なぜ山下穂子は配車サービスを利用するのだろう?
「知恵、あそこにあるのはお母さんの車じゃない?」狭山一美が角の高級車を指さした。
彼女は昨日病院で食べ物を買いに降りたとき、その車を見かけた。そばにいた人が宮本家の車だと言っていた。
京渡市全体で宮本家の車のナンバープレートだけが連番だからだ。
林知恵はちらりと見て、すぐに山下穂子が何をしているのか理解した。
山下穂子はきっと運転手に車をショッピングモールの駐車場に停めさせ、自分がショッピングをしていると思わせたのだ。
そして密かにタクシーで出かけたのだろう。
昨日の山下穂子の落ち着きのなさを考えると、何か問題が起きているに違いない。
林知恵は心配そうに運転手を見た。「あの配車サービスの車を追って。」
運転手はうなずき、アクセルを踏んで素早く追いついた。
最終的に配車サービスの車はプライベート病院の西側の門から入っていった。
運転手は路肩に停車し、尋ねた。「林さん、中まで追いかけますか?」
「中に入るのは目立ちすぎるわ。前の方で待っていてください。」林知恵は星奈を狭山一美に預けた。「星奈を見ていてくれる?母を見に行ってくるわ。」
「わかった、行ってらっしゃい。」狭山一美は事態が単純ではないことを察知し、表情も真剣になった。
林知恵は急いで車を降り、走って山下穂子の配車サービスの車を追いかけた。
幸い、車は順番に停車していたので、林知恵がホールの入り口に着いたとき、サングラスをかけた山下穂子がこそこそと中に入っていくところだった。
林知恵は考えた末、まずは状況を見ることにした。
彼女が山下穂子の後を追って中に入ると、後ろから人影が現れた。