白川若菜がそう言った以上、林知恵には断る理由がなかった。
「白川お嬢様に協力させていただきます」
「うん」
白川若菜は微笑んだ。
雪村真理は二人の会話が順調に進んでいるのを見て、立ち上がって言った。「あなたたち二人の能力なら、きっと過去の記念ジュエリーデザインを超えられると信じています」
「必ずやります」白川若菜は自信を持って答えた。
林知恵は大言壮語するのを避け、ただ微笑むだけだった。
しばらくして、二人は雪村真理のオフィスを後にした。
林知恵はもともと白川若菜に挨拶をするつもりだった。
「白川お嬢様…」
「林さん、私はまだ用事がありますので、先に失礼します」
白川若菜は林知恵の言葉を遮り、身を翻して去っていった。
林知恵は遠ざかる背中を見つめ、なぜか見覚えがあるような気がした。
どこかで白川若菜に会ったことがあるのだろうか?
頭の中で考えを巡らせていると、携帯が鳴った。
宮本深からだった。
「まだ終わってない?」
「今終わったところよ、どうしたの?」林知恵は小声で尋ね返した。
「下で待ってる」
「どうしてここに?」林知恵は驚いて言った。
「引っ越しだ」宮本深は思い出させるように言った。
林知恵は唇を噛み、彼の考えを察した。「私、撤回するなんて言ってないわ」
「待ってる」
宮本深はどこか気まずそうに、すぐに電話を切った。
林知恵は携帯を見下ろし、笑いながらエレベーターに乗り込んだ。
エレベーターのドアが閉まる時、白川若菜がゆっくりと姿を現した。
彼女は携帯に届いたばかりのメッセージを見て、同じく笑みを浮かべた。
……
林知恵が車に乗り込むと、男性は眉をひそめて電話を切るところだった。
「どうしたの?」彼女は何気なく尋ねた。
「何でもない」
宮本深は明らかにその話題を続けるつもりはなかった。
林知恵は一瞬躊躇してから、話題を変えた。「まだ荷物をまとめなきゃならないから、先に家に送ってもらえる?」
言い終わると、彼女は顔を窓の外に向けた。
二人の間には大きな距離があった。
宮本深が手を伸ばして彼女を引き寄せようとしたが、彼女はスマホをいじる動作でそれを避けた。
彼は一瞬黙った後、直接体を寄せてきた。
林知恵はすぐに手を上げて彼の胸を押さえた。「何するの?」