第464章 私は精進料理を食べるつもりはない

白川若菜がそう言った以上、林知恵には断る理由がなかった。

「白川お嬢様に協力させていただきます」

「うん」

白川若菜は微笑んだ。

雪村真理は二人の会話が順調に進んでいるのを見て、立ち上がって言った。「あなたたち二人の能力なら、きっと過去の記念ジュエリーデザインを超えられると信じています」

「必ずやります」白川若菜は自信を持って答えた。

林知恵は大言壮語するのを避け、ただ微笑むだけだった。

しばらくして、二人は雪村真理のオフィスを後にした。

林知恵はもともと白川若菜に挨拶をするつもりだった。

「白川お嬢様…」

「林さん、私はまだ用事がありますので、先に失礼します」

白川若菜は林知恵の言葉を遮り、身を翻して去っていった。

林知恵は遠ざかる背中を見つめ、なぜか見覚えがあるような気がした。

どこかで白川若菜に会ったことがあるのだろうか?

頭の中で考えを巡らせていると、携帯が鳴った。

宮本深からだった。

「まだ終わってない?」

「今終わったところよ、どうしたの?」林知恵は小声で尋ね返した。

「下で待ってる」

「どうしてここに?」林知恵は驚いて言った。

「引っ越しだ」宮本深は思い出させるように言った。

林知恵は唇を噛み、彼の考えを察した。「私、撤回するなんて言ってないわ」

「待ってる」

宮本深はどこか気まずそうに、すぐに電話を切った。

林知恵は携帯を見下ろし、笑いながらエレベーターに乗り込んだ。

エレベーターのドアが閉まる時、白川若菜がゆっくりと姿を現した。

彼女は携帯に届いたばかりのメッセージを見て、同じく笑みを浮かべた。

……

林知恵が車に乗り込むと、男性は眉をひそめて電話を切るところだった。

「どうしたの?」彼女は何気なく尋ねた。

「何でもない」

宮本深は明らかにその話題を続けるつもりはなかった。

林知恵は一瞬躊躇してから、話題を変えた。「まだ荷物をまとめなきゃならないから、先に家に送ってもらえる?」

言い終わると、彼女は顔を窓の外に向けた。

二人の間には大きな距離があった。

宮本深が手を伸ばして彼女を引き寄せようとしたが、彼女はスマホをいじる動作でそれを避けた。

彼は一瞬黙った後、直接体を寄せてきた。

林知恵はすぐに手を上げて彼の胸を押さえた。「何するの?」