オフィスに入ってきた人物に、雪村真理は少し驚いた。
なんと白川若菜だった。
雪村真理も経験豊かな人間だ。彼女は白川若菜が自分のスタジオを訪れたのは、単に二人が同窓生だからではないことを知っていた。
白川若菜には野心があるが、彼女は目立たないタイプだ。
多くのことを自ら手を下すのを潔しとしない。
こんなに積極的なのは初めてだった。
雪村真理は平然と尋ねた。「どうしたの?」
白川若菜は床に捨てられたデザイン案を一瞥し、ちょうどテーブルの上にある林知恵のデザインも目に入った。
「雪村長はもう選んだようですね」
「若菜さん、あなたが何を言いたいのか分かるけど、林知恵の立場は特殊で…」
雪村真理の言葉が終わる前に、白川若菜は彼女の言葉を遮った。
「彼女が三男様の人だからですか?」