オフィスに入ってきた人物に、雪村真理は少し驚いた。
なんと白川若菜だった。
雪村真理も経験豊かな人間だ。彼女は白川若菜が自分のスタジオを訪れたのは、単に二人が同窓生だからではないことを知っていた。
白川若菜には野心があるが、彼女は目立たないタイプだ。
多くのことを自ら手を下すのを潔しとしない。
こんなに積極的なのは初めてだった。
雪村真理は平然と尋ねた。「どうしたの?」
白川若菜は床に捨てられたデザイン案を一瞥し、ちょうどテーブルの上にある林知恵のデザインも目に入った。
「雪村長はもう選んだようですね」
「若菜さん、あなたが何を言いたいのか分かるけど、林知恵の立場は特殊で…」
雪村真理の言葉が終わる前に、白川若菜は彼女の言葉を遮った。
「彼女が三男様の人だからですか?」
「あなた…」雪村真理は驚いた。
「雪村長は私がどうやって知ったのか気にしなくていいです。ただ、私があなたを訪ねたのはあなたを助けたいからだということを理解してください。あなたの手元にあるデザインは確かに素晴らしいですが、もしこれが林知恵のデザインだと宮本当主に伝えたら、彼は受け入れるでしょうか?」
白川若菜はきっぱりと言った。
明らかにオフィスに入る前に、すでに言い分を考えていた。
雪村真理は躊躇して黙っていた。
この3年間で変わった人と物事があまりにも多かった。
京渡市の繁栄は誰も待ってくれない。
白川若菜は両手でスカートを押さえながら座った。「雪村長、今回のチャリティーパーティーはあなたにとって非常に重要です。本当に林知恵のために冒険するつもりですか?」
「今日起きたことは話題性が薄れたかもしれませんが、彼女がしたことは変わりません。こんな道徳的に堕落した人物の作品を使って、たとえ当主が承認したとしても、他の人は競り落とさないでしょう?スタジオも影響を受けるでしょう」
「あなたが彼女を利用して三男様に近づこうとしているのは分かりますが、彼女の微妙な立場では、彼女と三男様に結果はありえません」
「三男様は一人の妻を亡くしたとしても、次の妻が彼女のような人物になることは絶対にありえません」
ここまで話が進むと。
雪村真理も白川若菜が自分のスタジオに加わった本当の理由を理解した。
彼女は宮本深を目当てにしていたのだ。