第503章 門前での清算

林知恵と宮本深は声を聞いて工作室の入り口まで歩いてきた。

来訪者を見ると、直方来美の兄だった。

彼の後ろには親戚一同が続いていた。

先頭にいたのは直方来美の母親だった。

直方の母は入り口の階段に直接座り込んだ。「草刈栞を出せ!」

林知恵は少し不思議に思い、隣の男性の方を振り返った。

彼は冷たい目で起きていることすべてを見ていたが、少しも驚いた様子はなかった。

「三男様、何か説明することはないのですか?」

「少し警告を与えただけだ」宮本深は平然と言った。

林知恵はじっくり考え、理解した。

「つまり、誰かが彼を使って直方来美を殺し、その人物は工作室にいるということですね」

「そうだ」

言い終わるや否や。

工作室の入り口でガラスが割れる音が響いた。

直方来美の兄は入り口にあった芸術品を持ち上げ、ガラスのドアを壊し、さらにショーケースまで叩き壊した。

ショーケースには雪村真理が工作室を設立した時にデザインした女性の芸術的な顔があった。遠くから見ると水のように見え、近づいてはじめて女性の顔が現れる作品だった。

角度を変えると、女性の顔の決然とした表情がはっきりと見えた。

この女性が表しているのはまさに雪村真理だった。

優しさと勇敢さを兼ね備えている。

今やそれは粉々に砕け散っていた。

同僚たちがちょうど下りてきてこの光景を目にし、驚いて悲鳴を上げた。

その中の一人が草刈栞を直接押し出した。

草刈栞は来訪者を見て恐怖を感じ、逃げようとしたが、目ざとく素早い直方来美の兄に捕まってしまった。

「お前が俺の妹を殺したんだ!お前が俺の妹に林知恵を害するよう頼んだんだろう!」

「何を言い出すの?私はあなたなんて知らないわ!」

草刈栞は言いながら、逃げようとした。

しかし、彼女がごつい男性の相手になるはずがなかった。

次の瞬間、彼女は直方来美の兄に引きずり出された。

「よく見ろ、これはお前だろう?もし認めないなら、お前の同僚に確認させるぞ!」

彼は携帯を取り出し、他の人々に向かって一周見せた。

草刈栞は奪おうとしたが間に合わなかった。

彼女はただ大声で叫ぶしかなかった。「人違いよ、離して!」

「ふん、じゃあ俺にやらせたことを皆の前で言おうか。どうせ俺はうつ病のことなんて分からないし、お前が言ったうつ病の薬のこと…」