第525章 口が裏腹な男

「うん。」桑田剛は頭を下げて箸で料理をつまみ、「あっという間に年末だね。年が明ける前に決めるのが一番いいだろう。何か問題でもある?」

林知恵は箸をきつく握り、少し躊躇した。

しかし桑田剛の言うことは間違っていない。

スタジオの件は引き延ばせない。長引かせると余計な問題が生じる可能性がある。

「問題はありません。ただ、この数日は仕事の引き継ぎをしているので、帰ったら三男様に一言伝えます。」

「それもいいだろう。」

その後、二人は雑談しながら食事を続けた。

会話に夢中になり、近くのパーティションの向こう側に他の人が座っていることに気づかなかった。

林知恵と桑田剛が話している間、こちら側の二人も会話を始めていた。

宮本曜介はゆっくりと食事をしながら言った。「私を呼んだのはこれを見せるためか?」

白川若菜は冷ややかな目で答えた。「冗談でしょう。お爺様があなたが帰国したばかりだから、案内してあげるようにと言ったの。ちょうど時間があったから食事に誘っただけよ。」

宮本曜介は眉を上げて彼女を一瞥し、無駄話をする気はなかった。

「白川若菜、演技が少し下手だな。」

白川若菜はお茶を持ち上げる動作が一瞬止まったが、慌てる様子はなかった。

「本当に誤解よ。信じないなら、今から挨拶に行こうか?」

彼女はお茶を置き、立ち上がろうとした。

宮本曜介は制止した。「食事を続けよう。見るべきものもない。」

白川若菜は笑顔で頷いた。「わかったわ。」

彼女は心ここにあらずといった様子で二口ほど食べ、林知恵の方向をちらりと見た。

「同僚から聞いたんだけど、桑田社長は昔、林知恵を追いかけていたらしいわ。二人は密かに付き合っていたみたい。」

宮本曜介は箸を置き、口を拭いて食欲を失った。

「もう満腹だ。用事がなければ、会社に戻る。」

白川若菜は強要せず、頷いた。「お気をつけて。」

宮本曜介は立ち上がる際、さりげなく林知恵を見た。

一瞬の視線だったが、白川若菜の目に留まった。

彼女は冷笑した。口と心が一致しない男だ。

とにかく、彼女の目的は達成された。

……

昼休みが終わり、林知恵は戻って引き継ぎ作業を続けた。

その間、宮本深が契約書を送ってきて、お金も直接彼女の口座に振り込まれていた。

彼女は立ち上がって電話をかけた。