林知恵はぼんやりと席に座っていた。
頭の中にはたくさんの光景が浮かんでいた。彼女が生まれ変わってデザインの道を歩み直そうと決めた時から、彼女は雪村真理を自分の目標としていた。
大学卒業時の新人コンテストで、彼女が雪村真理を見た時の興奮は今でも覚えている。
初めてスタジオに足を踏み入れた時、どちらの足が先に入ったかまでもはっきりと覚えていた。
彼女はずっと、自分がついに夢に向かって歩き始めたと感じていた。
二人で協力して悪人を捕まえたり、地下バーで一緒に酔っ払ったりした。
先輩のように仕事のやり方や人としての在り方を教えてくれた。
また、彼女と宮本深のことを心配し残念がってくれた。
師であり友でもある人も変わることがあるのだと。
今、林知恵の気持ちは複雑だった。
人生をやり直しても、人か鬼かの区別は依然として難しい。
「知恵、どうしたの?」
気遣いの声が耳元で響いた。
林知恵は顔を上げ、視線を白川若菜に向けた。
彼女はいつもと変わらず、優雅で淡々としており、無害に微笑んでいた。
林知恵は彼女に軽く頷いた。「何かあった?」
「まだここに座っていられるなんて驚きね。あなたの机から多くのものがなくなっていることに気づかなかったの?」
白川若菜は淡々と笑いながら、まるで雑談をするように言った。
「知恵、あなたの能力は評価しているわ。でも、ここがもう少し賢ければいいのに」
彼女は頭を指さした。
林知恵は急いで何かを証明しようとはせず、わざと少し音を立てて、オフィス全体の注目を集めた。
彼女は白川若菜に手を差し出した。
「白川お嬢様、おめでとうございます。どうやら会長はあなたをとても重視しているようですね。養子が帰国するとすぐに、あなたを側につけてクライアントをもてなさせるなんて」
「……」
白川若菜の顔には依然として笑みが浮かんでいたが、林知恵を見る目は揺れ動き、ほとんど平静を保てないところだった。
チャリティーパーティーには多くの同僚が参加していなかったため、内部の出来事を知らなかった。
林知恵が言うと、多くの人が目を見開いて、ひそひそと話し始めた。
「養子?前回、三男様が白川お嬢様を送り届けた時、会長が白川お嬢様を三男様に紹介するのかと思っていました」