十数分経っても、燿子は自分が送ったメッセージがまだ届いていないのを見て、もう一度涼に電話をかけたが、やはり話し中の状態だった。
燿子はなんとなく何かを悟ったような気がして、傍らの固定電話で涼に電話をかけた。
電話はあっさりとつながった。
やはり、彼女の予想通り、最初に彼女の電話が拒否された時点で、彼は彼女の番号をブラックリストに入れていたのだ。
燿子の目が一瞬暗くなった。ちょうど固定電話を切ろうとして、執事に昼間涼に連絡してもらおうと思った時、突然電話が繋がり、涼は彼女からの電話だと察したようで、いきなり不機嫌な声で言った。「いい加減にしろよ?俺は言ったはずだ、用事があろうがなかろうが俺を煩わせるなって」
「おじいさまから電話がありました……」燿子は涼が次の瞬間に電話を切ってしまうのを恐れ、急いで要点を伝えた。「……おじいさまが今朝早く東京に着いたから、今晩彼のところで食事をしましょうと」
電話の向こう側の涼は何も言わなかった。
燿子はしばらく待ったが、涼がずっと反応しないので、続けて言った。「前回と同じように、あの場所であなたを待ちましょうか?」
前回というのは、彼女が彼の家に住み始めた最初の日、おじいさまが彼に彼女を連れて帰って食事をするよう言ったとき、彼は車で彼女を迎えに行くのを嫌がり、彼女一人でおじいさまの住む団地の近くの小さな路地で待つように言ったことだった。
彼女は思った、今回も彼は彼女を迎えに来たくないのだろう。
燿子は胸の失望を押し殺し、普段と変わらない口調で尋ねた。「では、明日何時に行って待ちましょうか?」
涼は彼女の質問に対して、やはり何も言わなかった。
「それとも午後…」今回、燿子がたった四文字言ったところで、電話から突然、何の前触れもなく涼の声が聞こえてきた。その声は氷のように冷たかった。「毎回おじいさまを口実に俺に纏わりついて、お前は気持ち悪くないのか?」
燿子は固定電話の受話器を握る手に急に力が入った。彼女は自分の首が誰かに強く締め付けられているような感覚があり、後に続くはずだった「六時ですか?」という三つの言葉が喉に詰まって、上にも下にも行かず、耐え難いほど苦しかった。
電話の両端は一瞬にして恐ろしいほど静かになった。
わずか二秒後、電話は涼によって切られた。
燿子は受話器を持ち上げたままの姿勢で、長い間硬直していた。ようやく我に返ると、彼女はゆっくりと受話器を固定電話に戻し、ゆったりとベッドに横になり、布団をかぶって目を閉じた。まるで眠りにつくかのような穏やかな様子だった。しかし、彼女の目尻には光る涙が見え、布団を握る手は激しく震えていた。
……
未明の電話で、燿子と涼は有栖川家の旧邸に行く時間を約束していなかった。電話を切る前に涼はあんなにも酷いことを言ったので、燿子がもう一度彼に電話をかけて時間を尋ねるなど、自ら恥をかくようなことはしなかった。
燿子は涼が何時に有栖川家の旧邸に行くのか知らなかったが、彼が五時半に仕事を終えることは知っていた。
そのため、午後五時半になる前に、燿子は既に有栖川家の旧邸の団地入口近くの小さな路地で待っていた。
六時半になると、遠くの通りから鋭いクラクションの音が聞こえてきた。燿子が横を向くと、涼の車がハザードランプを点滅させながら路肩に停車しているのが見えた。
車の前まで歩いていくと、燿子は今日運転しているのが涼自身で、彼の運転手ではないことに気づいた。