第37章 彼と彼女の過去の時間(7)

常盤燿子は有栖川涼の名前を出さず、ただ「彼」という言葉を使っただけだった。執事は一瞬戸惑った後、理解した。「かしこまりました、お嬢様」

マスクをしていたため、常盤燿子の声はやや不明瞭だった。「二日酔いはつらいものよ、きっと頭が痛いはず。彼に蜂蜜入りのお茶を入れてあげて、飲めば少し楽になるわ」

「お嬢様、承知いたしました」執事は答えた後、今はまだ早い時間だと気づき、余計な一言を付け加えた。「お嬢様、こんなに早くからお仕事でお忙しいのですか?」

彼女が忙しいのは仕事のせいではなく、有栖川涼が目を覚まして彼女を見て怒り出すのが怖かったからだ...常盤燿子は執事に本当のことを言わず、軽く頷いて「ええ」と答えた。

執事はそれを信じた。「では、お嬢様、他に何かご指示はありますか?」