第36章 彼と彼女の過去の時間(6)

「水、水……」有栖川涼は不明瞭に呟き、常盤燿子を突然記憶から引き戻した。

おそらく回想の時間が長すぎたのだろう、彼女は少し茫然としていた。しばらく呆然としてから、ようやく有栖川涼の口から漏れた言葉の意味に気づいた。

彼女は素早くベッドから立ち上がり、傍らの水杯を手に取り、急いで階下に降りて温かい水を一杯注いだ。

酔いつぶれた有栖川涼に水を飲ませた後、常盤燿子は彼の掛け布団を直し、しばらく彼の顔を見つめてから立ち上がり、ソファに移動してクッションを抱えて座った。彼女は携帯を取り出し、時間を確認した。

すでに午前三時を過ぎていた。

彼女はさっきからまた一人で二時間以上も、彼と彼女の過去の日々を思い返していたのだ。

そう、また。

この数年間、彼女は何度自分が一人の時に、ある言葉や出来事、ある光景から彼を連想し、まるで魂を失ったかのように回想に浸り、抜け出せなくなったことか。