第76章 深い愛と浅い縁(6)

ドアを開けて、有栖川涼が車に乗り込んだとき、大和くんは振り向いて、奇妙な表情で彼を一瞥した。

有栖川さんは確かに実家の玄関まで行ったのに、なぜドア前に少し立っただけで、また戻ってきたのだろう?

大和くんには多くの疑問があったが、尋ねる勇気はなく、ただ有栖川涼が座るのを待ってから車を発進させ、実家の門を出るときになってようやく声をかけた。「有栖川さん、会社に戻りますか?」

有栖川涼は自分の思考に沈んでおり、何を考えているのか分からず、大和くんに返事をしなかった。

大和くんはそれ以上質問せず、直接会社の方向へ車を走らせた。

約2キロほど走ったとき、有栖川涼はいつものようにタバコを取り出し、また吸い始めた。

大和くんは前方の道路状況に注意しながら、こっそりと有栖川涼を観察していた。