常盤燿子はびっくりして、手に持っていた車の鍵が指の間からすり落ち、彼女の足首に当たって、少し痛かった。
彼女は無意識に頭を下げ、手を伸ばして足首を撫で、それから車の鍵を拾い上げた。
体を起こし、バックミラーを通して後ろを見ると、有栖川涼はすでに運転席側に歩み寄り、車内の大和くんに何かを言ったようだった。大和くんは頷き、それから有栖川涼は二歩後ろに下がり、歩道に立った。大和くんはハンドルを回して車をバックさせ、Uターンして去っていった。
有栖川涼は車に乗らず、大和くんは車で行ってしまった。それなら彼は……
常盤燿子がそう考えていると、有栖川涼が片手をポケットに入れ、ゆっくりと彼女の車に向かって歩いてきて、助手席の横に立ち止まり、まず手を伸ばしてドアを引いたが開かず、それから手を上げて窓を二回ノックし、「トントン」という音がした。