彼女をB2駐車場に送るの?彼は……彼女と田中屋に行かないつもりなの?
常盤陽が有栖川涼に「わかりました」と言った後、常盤燿子は思わず彼の名前を呼んだ。「有、有栖川涼?」
有栖川涼は元々踏み出そうとしていた足を、彼女の声を聞いて止めた。
「あなた、田中屋に行くんじゃなかったの?」常盤燿子は彼の背中を見つめながら、小さな声で尋ねた。
「興味がなくなった。食べたいなら一人で行けばいい!」有栖川涼は少しの躊躇もなく、常盤燿子の質問に対して直接的に答えた。
彼のあっさりとした拒否に、常盤燿子は何を言えばいいのか分からなくなり、軽く唇を噛んで視線を落とした。
有栖川涼は振り返る気配もなく、彼女に背を向けたまましばらく立っていたかと思うと、個室のドアを開けて出て行った。
部屋の中の雰囲気が一瞬凍りついた後、常盤陽はすぐに場を和ませるように口を開いた。「少し待っていてください。チームに一言伝えてから、駐車場までお送りします。」