常盤燿子は二秒ほど立ち止まり、すぐに上杉琴乃の意図を理解した。「琴乃、いつ東京に着いたの?」
「あなたに電話した時よ、ちょうど飛行機を降りたところだった……」受話器越しに、常盤燿子は上杉琴乃がタクシーの運転手に「東京グランドホテル」の住所を告げるのを聞いた。そしてタクシーの運転手が応答した後、上杉琴乃は携帯電話に向かって続けた。「……明日の午前中に会社の面接の約束があって、午後には柊木誠一と一緒に大阪に帰るの。だから、ちょっと急いでるの……」
上杉琴乃はたくさん話した後、突然思い出したように、重要なことを尋ねた。「そうだ、燿子ちゃん、今夜は時間ある?」
「あるよ……」常盤燿子は携帯電話の時間を見た。すでに5時20分だった。有栖川涼の別荘から東京グランドホテルまではある程度距離があり、今はちょうど夕方のラッシュアワーだった。「……じゃあ、もう話すのはやめておくね。後で会ったら話そう。」