有栖川涼は振り返りもせず、見なかったふりをして、携帯をしまいポケットに入れた。それから常盤燿子に向かって、後で彼女に言おうとしていたことを口にした。「今夜、パーティーに付き合ってくれ」
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常盤燿子が有栖川涼の言葉を聞いた最初の考えは、前回のような晩餐会に彼女を連れて行くのだと思った。フォーシーズンホテルのスイートルームに着いてはじめて、涼の言うパーティーは単に友人たちが集まって遊ぶだけのものだと理解した。
このようなパーティーを、燿子は前回の大雨の夜、涼にフォーシーズンホテルに連れて行かれた時に一度見たことがあった。
しかしその日は、ドア越しにちらっと見ただけで、参加はしなかった。
彼女は自分が参加できるとは思っていなかった。結局、このようなパーティーは涼のプライベートな生活の一部であり、彼は彼女に遠ざかってほしいと願っているのに、どうして彼女をこのようなパーティーに連れて来るだろうか?