第212章 彼の一日一日の変化（2）

有栖川涼はマイクを握り、執事の言葉に浸りながら、黙っていた。

あの日、彼女はあれほど彼を拒絶していたので、彼は彼女が何か心配事があり、気分が優れないのだと感じていた。これだけ日が経っても、彼女はまだそこから抜け出せていないのか？

執事によると、彼女はいつも一人で家に閉じこもってぼんやりしているという。これではいけない。このままでは、うつ病になってしまうではないか？

「有栖川さん？有栖川さん？」執事は電話の向こうからなかなか反応がないのを見て、思わず声をかけた。

有栖川涼は呼びかけられて我に返った。彼はしばらく考えてから、淡々と口を開いた。「大和くんが用事があって、行けなくなった。書斎から書類を取って和泉さんに渡して、彼女にここへ持ってきてもらうように。」少し間を置いて、有栖川涼はさらに言った。「夕食の準備はいらない。和泉さんと外で食べる。」