奥様?彼女をそう呼ぶの?有栖川涼はずっと彼女を「お嬢様」と呼ばせていたのでは?
常盤燿子は執事の「奥様」という言葉にまだ戸惑っていたところ、彼女の前に歩み寄った執事が手を上げて彼女の頭を撫で、にこやかに再び口を開いた。「熱は完全に下がりましたね。奥様、今どこか具合の悪いところはありますか?」
常盤燿子は首を振った。彼女には聞きたいことがたくさんあったが、どこから質問を始めようか考えている間に、執事は彼女が話す前に三度目の言葉を発した。「奥様、お友達がいらっしゃっています。下でお待ちですので、急いで身支度をして降りてきてください。私が先にお客様をもてなしておきます。」
友達?
常盤燿子の頭に最初に浮かんだのは「高橋静香」だった。あの日、彼女は12日に和泉沙羅と入れ替わる予定だと言っていた。今日はもう11日だから、彼女が来たのは、どうやって元に戻るかを相談するためだろう。