第372章 草むらの指輪（2）

彼女は管理人に電話をかけたが、何度も鳴っても誰も出なかった。

こんな遅い時間だから、管理人は携帯をマナーモードにして寝ているのだろう……常盤燿子はそう思い、電話を切って自分でベッドから降り、階下の電話帳で夏目医師の電話番号を探そうとした。しかし、指先が画面の切断ボタンに触れる前に、電話がつながった。

常盤燿子が「もしもし」と声をかけたが、相手からの返事はなかった。

あまりにも具合が悪くて、常盤燿子は話すのも苦労していた。彼女は目を開けず、弱々しい声でもう一度尋ねた。「管理人さんですか？」

返ってきたのはやはり沈黙だった。彼女は眉をしかめ、再び苦しさに耐えながら全身の力を振り絞って言った。「聞こえていますか？私の声が聞こえていますか？管理人さん、私は……」

常盤燿子の言葉が終わらないうちに、電話は切れ、ツーツーツーという話中音が聞こえた。