第440章 私は一つの未来しか思いつかない(10)

体の回復が完全ではなく、顔色が少し青白いこと以外、有栖川涼はいつもと変わらなかった。会議でも、顧客との交渉でも、話す言葉は筋道立てられ、明確だった。

陸田透真は最初まだ少し心配していたが、数日間注意深く観察した結果、有栖川涼がずっとこのように静かで穏やかな様子であることを知り、徐々に安心するようになった。

ある日、有栖川涼と陸田透真が一緒に宴会に参加した時、ある人が有栖川涼に冗談を言い、じゃんけんをして負けた人が三杯のお酒を飲むという罰ゲームを提案した。

有栖川涼は気分が良くない時は、人と関わるのを好まない。和泉沙羅の身代わりが去ってから数日しか経っていないので、陸田透真は、この人はきっと断るだろうと思った。

しかし、メインテーブルに無造作に座っていた有栖川涼は、まぶたを少し上げ、何気なく「いいよ」と言った。