第464章 彼女の記録を調べる(4)

彼女が選んだ曲は、かつて有栖川涼に聴かせた『終点』だった。

思い出というものは、毒を持っている。触れてはいけない。

今日たまたま彼と出会わなければ、この曲はきっと彼女の心の奥深くに封印されたままで、触れることはなかっただろう。

あまりにも突然の再会が、これまで穏やかだった彼女の心を再び混乱させてしまった。一晩中上杉琴乃と一緒にいて、楽しそうに笑っていて、何も問題ないように見えたが、時々心ここにあらずの時、心の底には寂しさと苦しさがあった。だからこそ、先ほどお酒の勢いでこの曲をリクエストしたのだ。

もし彼が来なければ、この曲を歌っていただろう。でも彼が来てしまった……彼に知られてはいけないことがある。一曲の歌が何かを悟らせるとは限らないが、用心に越したことはない。