第28章 見死不救

「わかった、すぐに売りに行くよ!」安藤明彦が出かけようとした。

藤堂辰也が突然冷たく口を開いた。「私が行っていいと言ったか?」

安藤明彦は驚いて立ち止まった。一度止まると、もう足が動かなくなった。

「藤堂辰也、何のつもりだ!」安藤若菜は焦って彼に向かって叫んだ。「吉は喘息発作を起こしている。薬がないと死んでしまうわ!」

「死んでも先に謝れ!」男は冷酷に言い放った。

皆が一瞬固まった。今日、彼らは初めて藤堂辰也の冷酷さを目の当たりにした。

安藤若菜は驚いて目を見開き、彼を見る目は、まるで極悪非道の悪魔を見るようだった。

「おじさん、おばさん、姉さん、早く薬を売りに行って、吉を助けて!お願いします!」

「藤堂さん……」安藤明彦は困った様子で口を開いた。どう言っても、安藤吉は彼の甥であり、安藤家唯一の後継ぎだ。彼の生死を無視するわけにはいかない。