第338章 ベイビー、旦那様って呼んでみて2

「姉さん、売ってしまいましょう。私たちは安藤家に労力を費やす必要はありません。将来あなたが安藤家を望むなら、私が新しく安藤家を作り直します」

彼女も同じように考えていた。「いいわ、それなら売ることにするわ」

安藤家を持ち続けることは負担でしかなく、思い切って処分して、自分の望む生活を送る方がいい。

この話題が終わると、安藤吉は彼女の調子を尋ね、安藤若菜は当然ながら元気だと答えた。

彼女は安藤心に命を狙われたことを彼に話さなかった。話せば彼が心配するに決まっているからだ。

安藤若菜も彼の様子を尋ねた。姉弟二人とも良いことだけを伝え、互いに心配させないようにしていた。

短い通話の後、彼らは名残惜しみながら電話を切った。

いつになったら再会できて、二度と離れ離れにならずに済むのだろうか。

決心がついた安藤若菜は車椅子を押して寝室を出た。

藤堂辰也はリビングで仕事をしていた。最近、彼は重要でない仕事をリビングで処理するのが好きだった。

人の気配がある場所では、仕事にもやる気が出るようだった。

安藤若菜は車椅子を彼の前まで押して、試しに言った。「お願いがあるんだけど」

男性は少し顔を上げた。「何?」

「私と吉は安藤家を売ることに決めたの。でも私はこういうことがわからないから、売るのを手伝ってくれない?」

「株式を売るのか?」

安藤若菜はうなずいた。「うん、私たちが持っている株を売りたいの」

藤堂辰也は膝の上のパソコンを置き、両足をテーブルに乗せ、両手を組んでお腹の上に置いた。「安藤家はこれからもっと利益を生み出すだろう。本当に売る気なのか?」

「私には経営できないわ。私の手にあっても、これ以上の利益は生み出せない。それに、いくら利益があっても私には意味がないの」彼女は大金持ちになることを求めておらず、ただ平穏に人生を過ごせることを願っていた。

男性は軽くうなずいた。「わかった、代わりに処理しよう」

「ありがとう」

藤堂辰也は口元を少し上げた。「本当に感謝するなら、明後日は俺の誕生日だから、俺の好きなプレゼントをくれ」

安藤若菜は少し驚いた。「明後日があなたの誕生日なの?」