第349章 彼をしっかり抱きしめる6

男は彼女の言葉に頷いて同意した。「いいよ、お前が言ったんだからな。一口でも少なく食べた方が子豚だ！」

言い終わるや否や、彼は大きく一口食べた。安藤若菜も遅れまいと、急いで箸で料理をつまんで口に入れた。

こうして二人は競うように一口ずつ食べ、自分が少なく食べないように必死だった。

この食事を安藤若菜はとても楽しく食べた。藤堂辰也の目にも、ずっと楽しそうな笑みが浮かんでいた。

食事を終えると、彼女は春節晩会を見たいと言い出した。

男はこういう番組を見ることを軽蔑していたが、それでも彼女と一緒に見ることにした。

安藤若菜は笑いのツボが浅く、ずっと笑っていた。藤堂辰也は笑わなかったが、ただ彼女の隣に座って静かに見ていた。

十二時まであと十五分というとき、彼は突然立ち上がって二階に上がった。安藤若菜は不思議そうに彼を見て、彼は十二時まで一緒に過ごさないのかと思った。

少し落胆した。今日は大晦日なのに。好きでなくても、一緒に十二時を迎えて新年を祝うべきではないだろうか。

数分後、藤堂辰也はパソコンを持って階下に降りてきた。彼はパソコンをテーブルの上に置いた。

そして彼女を車椅子から抱き上げ、そっとソファに座らせ、毛布で彼女の両足を覆った。

安藤若菜は不思議そうに彼に尋ねた。「何をするの？」

彼は何も言わず、黙ってパソコンを開き、数回クリックすると、画面に動画が表示され、安藤吉が新しい服を着て現れた。

彼は安藤若菜を見ると、嬉しそうに手を振った。「姉さん、新年おめでとう！」

安藤若菜は思いがけない喜びに目を赤くした。「吉、新年おめでとう」

彼は彼女と吉をビデオ通話させようとしていたのだ。新年を一緒に迎えないわけではなかった。

彼が彼女をソファに座らせたのも、吉に彼女が怪我をしていることを知られないようにするためだった。

藤堂辰也のこの二つの行動に、安藤若菜は感動した。

彼女は彼を見て微笑み、目には無言の感謝の気持ちが表れていた。

男はわずかに唇を曲げた。おそらく照明が暗かったせいか、彼の眼差しには優しさが感じられた。

安藤若菜はこの機会を逃さず吉と話し、数分後、十二時になった。

外では突然花火の音が鳴り響き、安藤吉の方でも花火の音が聞こえた。

このお祝いムードの中、安藤若菜は彼に尋ねた。「吉、そっちでも春節を祝うの？」