第500章 あなたは彼のことをそんなに気にかけているの?

藤堂辰也は淡々と彼の言葉を遮った。彼の一瞥で、梁井維明は彼の意図を理解した。

「ええ、患者の状態に配慮が足りませんでした。わかりました、外で話しましょう。彼女にゆっくり休んでもらいましょう」

藤堂辰也は彼女の掛け布団をきちんとかけ直すと、梁井維明に続いて病室を出た。

安藤若菜の目に疑惑の色が浮かんだ。彼らが何か隠していると感じた。

梁井おじさんが「雲」という字を言ったとき、彼女は敏感に雲井陽介を連想した。

この件は雲井陽介に関係しているのだろうか?

あの日別れるとき、雲井陽介が全身傷だらけだったことを思い出すと、彼女の心は不安でいっぱいになった。

その時立ち去ったのは、彼に迷惑をかけ続けないためで、彼の状況を電話で尋ねる勇気さえなかった。

もしかして彼に何かあったのだろうか?

安藤若菜はずっと落ち着かない気持ちで藤堂辰也の戻りを待っていた。彼が病室に入ってくるのを見ると、すぐにでも雲井陽介の状況について尋ねたい気持ちでいっぱいだった。

男は点滴を見た。半分以上減っていた。彼は笑顔で彼女に言った。「もう少し待って、もうすぐ帰れるよ」

「藤堂辰也、あなたに聞きたいことがあるの」安藤若菜は彼をじっと見つめ、淡々と言った。

「何?」

「さっきあなたと梁井おじさんは何を話していたの?雲井陽介に何かあったの?」

藤堂辰也の目の奥に深い色が過ぎった。彼は口元を歪めて反問した。「なぜ彼に何かあったと思うの?」

「聞こえたわ。梁井おじさんが『雲』って言ったのよ。それに私を避けて話していたし、きっと彼に関係することよ」

男はすぐに表情を曇らせ、冷たい口調で言った。「君は彼のことをそんなに気にかけているのか?」

安藤若菜は、彼が自分が雲井陽介の話をするのを嫌がることを知っていた。

彼女も冷たい表情になり、目元も冷え切っていた。「別に深い意味はないわ。ただ彼が私のせいで何かあったら嫌なだけ。教えてくれないなら仕方ないわ、自分で聞くから」

「そんな小さなことまで聞かなきゃならないのか」藤堂辰也は薄く笑い、彼女の手を握りながら淡々と言った。