第16章

萩原天凡は女性を一目見て、千雪の前に歩み寄り彼女を助け起こした。「千雪、任務完了だ。私たちも退勤しよう」

千雪は立ち上がり、萩原天凡に支えられながら、足を引きずって一歩一歩エレベーターへ向かった。

エレベーターに乗り込むと、萩原天凡は突然神秘的な口調で言った。「千雪、さっきの女性が誰か知ってる?」

千雪は首を振った。

「あの女性は私たちの冷泉社長が一年間付き合っている愛人だよ。よく冷泉家に来て冷泉社長と食事をしているんだ。絹子から聞いたけど、冷泉社長とあの女性はよく金港グランドホテルに行くらしい…」

千雪は驚き、手話で言った。「冷泉社長はそんな年齢なのにそんなことをして、奥さんが悲しむと思わないのかしら?」

萩原天凡は大げさに目を白黒させた。「千雪、やっぱり君は冷泉家のことを全然知らないんだね。この冷泉社長はここの第一のゴールデンバチェラーで、冷泉家の最高経営責任者だよ。今年二十九歳。超イケメンなだけじゃなく、とても有能なんだ。知らないだろうけど、この冷泉社長は二十五歳で自分の実力だけで社長の座に就いたんだ…残念なのは少し冷酷で情がないところかな、どれだけ多くの女性の心を砕いたか分からない…」