第20章

しばらくして、隣から安定した浅い呼吸が聞こえてきた。眠れない冷泉辰彦は彼女の体から漂う淡い香りを嗅ぎながら、彼女を尊重することを選んだ。

彼はベッドから降りてバルコニーに出て、海風の中で静かにタバコを吸っていた。

翌朝、冷泉辰彦は腕の中で身をすり寄せる女性に目を覚まされた。彼は眠そうな目を開けて、苦笑せずにはいられなかった。

昨晩彼から遠く離れていた井上千雪が、今やコアラのように彼にしがみついていた。Tシャツでは隠しきれない長く美しい脚が彼の腰に絡みつき、柔らかな体が彼の胸元に猫のようにすり寄せ、白磁のように無垢な肩がTシャツの大きな襟元から覗き、Tシャツの中の光景も彼の目に余すところなく映っていた。

彼は初めて知った。彼女が彼の首筋に顔を埋めて甘い息を吐きながら、無防備に可愛らしく眠るのが好きだということを。