第19章

「ピッ、ピッ……」バッグの中から電話が鳴り始めた。彼女は取り出して、電話に出た。

「今夜行くから、準備しておけ」冷泉辰彦の声だった。そう言うと、彼はすぐに電話を切った。

「ツー、ツー……」電話の切れた音を聞きながら、彼女の脳裏には先ほど彼が相手の電話を切る様子が浮かんだ。今や彼のいらだちが想像できた。彼女は静かに携帯をバッグに戻し、慣れた様子でコンビニへと向かった……

野菜や果物を満載した電動自転車を押してアパートの入り口に着くと、駐車場には既に彼の車が停まっていた。そこで彼女は顔につけていた黒縁メガネを外し、続いて束ねていた長い髪をほどいて自然に肩に流した。最後に上着のスーツを脱いで腰に巻き、白いキャミソールを露わにした。

全てが整うと、彼女の小さな顔に微笑みが戻り、二つの大きな袋に入った野菜と果物を持ってアパートに入った。