「葉野社長、すでに井上千雪だと断定する人がいるのなら、物的証拠など必要ないのでは?もしかしたら彼女はすでに機密情報を他の会社に売ってしまったかもしれませんよ」柳沢雲子が色っぽく口を挟み、彼に向かってこっそり色目を使った。
葉野宿白は淡々と微笑み、言った。「監視室に行って昨日の監視カメラの映像を確認しましょう。小林秘書も興味がありますか?」彼は柳沢雲子を無視し、依然としてこの冷たい表情の社長秘書に注目していた。
「もちろんあります」小林秘書は冷たく言った。井上千雪が気に入らないとはいえ、彼女にも自分の原則があった。正しいことをしていれば影が歪むことを恐れる必要はない。もし本当に井上千雪がやったのなら、彼女は即座に彼女を追い出すだろう。
その後、彼女は冷たい目で周りの人々を見回した。「皆さん、仕事はないのですか?」この一言で、輪になって集まっていた人々はすぐに散り散りになり、それぞれの持ち場に戻った。
彼女は満足げに顔の黒縁メガネを直し、葉野宿白と並んで監視室へ向かった。
「映像テープは準備できた?」「安心して、もう準備できてるよ」「それならいいわ、何か問題が起きないようにね」後ろで人々がひそひそと話し合っていた。
最後尾を歩いていた千雪は、手のひらに汗をかいていた。今回こそ、葉野社長が彼女の潔白を証明してくれることを願った。
監視室のスタッフは昨晩7時から8時15分までの映像テープを取り出し、再生したが、何も異常は見られなかった。
「葉野社長、何か言い分はありますか?」小林秘書は冷たく口を開いた。画面には8時15分の時間が表示され、廊下やエレベーターには井上千雪がこのベージュ色のドレスを着ている姿が映っており、さらに共犯者も一人いた。
葉野宿白は画面をじっと見つめ、眉をひそめた。しばらくして、彼は言った。「言い分はあります」彼はスタッフに8時15分以降のテープを調べるよう指示し、繰り返し観察した後、画面を停止させた。「皆さん、この画面をよく見てください」
数人のスタッフが集まり、コンピュータの画面をじっと見つめていると、その中の一人が突然叫んだ。「編集された痕跡があるようです」