第30章

オフィスに着くと、男装に戻った萩原天凡は突然、美しく包装された小さな贈り物の箱を彼女の机の上に置いた。「お父さんからの挨拶の品だよ。この間、うっかりアパートに忘れていたんだ」

千雪は驚き、受け取って開けると、精巧に作られた銀のネックレスが箱の中に横たわっていた。チェーンは純銀で輝き、小さなハート型のペンダントは上品で優雅で、まさに彼女の好みのスタイルだった。

「お父様によろしくお伝えください」彼女は手話で心から言った。柳沢雲子によって落ち込んでいた気持ちが一瞬で明るくなった。フォックスさんがこんなに気遣ってくれるとは思わなかった。彼女のことを覚えていてくれたなんて。

萩原天凡はそれを見て、凛々しい顔が晴れやかになった。千雪は何も知らない、彼女を責めることなどできるはずがない。こう考えれば、千雪が人事部に異動することは、彼女にとってもチャンスだ。そうすれば、千雪を通じて葉野宿白に会えるじゃないか。そうでしょう?