「はぁ……」冷泉敏陽は軽くため息をつき、徐々に遠ざかっていく息子の背中を見つめながら、老いた顔に後悔と苦痛の色を浮かべた。彼がこの一生で申し訳なく思っているのは、辰彦の母親の他に、もう一人の女性がいた。
冷泉辰彦の心は、父親に会った後、さらに苛立ちを増した。この数年間、彼はずっと冷泉邸に戻ることを拒んでいた。仕事が忙しいという理由もあったが、父親への憎しみもあった。
そう、憎しみだ。彼は父親が若い頃、冷泉家の仕事に忙殺され、兄弟姉妹三人の教育に関わることが少なかったことを責めてはいなかった。むしろ、父親が冷泉グループを一手に支え上げたことに、わずかながら敬意を抱いていた。
しかし、そのように太陽のごとく輝く父親が、母親を秋の夕日に照らされる花のように、日に日に萎れさせていった。彼が永遠に記憶しているのは、母親の憂いに満ちた涙顔だった。