しかし、彼は身動きひとつせず、体は熱く燃えているのに、瞳は氷のように冷たく、彼女の胸がどきりと跳ねた。彼女はフロントマネージャーを買収して彼の部屋の鍵を手に入れ、誘惑に失敗した今、重罪を問われるかもしれない。彼女は何とか取り繕わなければならなかった。
「わ...私はあなたの助手からここにいるかもしれないと聞いて、ついてきたの。サプライズを用意しようと思って...」彼女は身を引き、恐る恐る男との距離を取りながらも、甘えた声で言った。「辰彦、私たちがよく行ってたホテルのボウリング場に行かない?新しいアトラクションができたって聞いたんだけど...」
誘惑に失敗した以上、彼をここから早く連れ出さなければならない。記者たちや冷泉大奥様がすぐにここに来るかもしれないからだ。もし今の状況を目撃されたら、西川若藍はこの18階から飛び降りるしかないだろう。