第70章

そこで彼女は素直に彼に抱かれるままにし、先ほどの不快感をすべて隠して、亀の甲羅の中の自分に戻った。

「お祖母様、この子はいないでしょう」冷泉辰彦は目を細め、身体中が落ち着かない西川若藍を冷たく睨みつけ、冷笑した。「西川若藍、あなたは本当に棺を見るまで涙を流さないのね。それなら私も容赦しないわ!」

「辰彦……」松本秀子は西川若藍の少しずつ死灰のように青ざめていく小さな顔を見て、心配になった。

「川口森、録音テープを持ってきて、ついでにその林田という者も連れてくるように!」冷泉辰彦は電話で冷たく命じ、深い瞳で西川若藍を見つめ、その目には容赦ない冷酷さがあった。恨むならこの女が余りにも情け容赦なかったせいだ。今日のこの暴露された場面は、すべて彼女自身が招いたものだ。

しばらくして、彼の助手である川口森が録音テープを持って入ってきた。後ろには恐る恐る従う40歳前後の中年女性がいた。西川若藍はその女性を見るなり、松本秀子の腕の中でくずおれた。

「辰彦?」ずっと黙っていた冷泉敏陽が声を出した。息子に余りにも厳しくしないよう諭すように。

冷泉辰彦は父親を無視し、皆の前で西川若藍と林田医師の電話での会話と取引を再生した。林田という産婦人科医は口ごもりながら言った。「私はお金に目がくらんで、西川さんのために偽の妊娠報告書を作ってしまいました……」

「それで?」冷泉辰彦は眉を上げ、続けるよう促した。

「ですから、西川さんは実際には妊娠していません」林田医師は深く息を吸い、申し訳なさそうに西川若藍を見て、真実を明かした。仕方がない、もし相手が冷泉若旦那だと知っていたら、十の胆があってもこんなことはしなかっただろう。

「なるほど、そういうことか……」記者たちはざわめき、手を休めることなく忙しく動かした。今日の収穫は大きすぎる。冷泉若旦那の本当の愛を暴くだけでなく、西川若藍の悪意も暴露された。まさに痛快だ。

松本秀子は騒がしくなる人々を見て、くずおれた西川若藍を支えながら、冷泉辰彦に厳しく言った。「辰彦、この女のためにそんなに若藍を傷つけないで。あなたがこんな芝居を演じても、お祖母さんは信じないわ。私は若藍が私を騙すはずがないと信じているの……」